妊娠性歯肉炎

妊娠性歯肉炎とは？

妊娠中は女性ホルモン（エストロゲンやプロゲステロン）の分泌が急増します。これらのホルモンは、一部の歯周病菌の栄養源となり、菌の増殖を促進します。また、血管の透過性が高まり、唾液の粘性が増すことで口腔内の自浄作用が低下し、歯肉炎になりやすい状態になります。

妊娠性歯肉炎の症状

歯肉炎は文字通り歯肉が炎症を起こしている状態です。

主な症状
①色が赤くなっている
②ブヨブヨと腫れている
③歯と歯の間にある歯肉が、丸く厚みを持ってふくらんでいる
④歯を磨いた時などに出血しやすい
４つの項目のうち一つでも当てはまる場合は、歯肉炎になっている可能性が高いです。

妊娠性歯肉炎は部分的に腫れやすいことが特徴としてあります。場所は大体上の前歯の歯肉が多いですが、奥歯の歯肉の方にも腫れが出る方もいます。
また、妊娠期間中に急速に症状が進みやすいのも妊娠性歯肉炎の大きな特徴です。

歯肉炎を放置すると歯周炎に悪化

歯肉炎は悪化すると、歯周炎という病気に進行します。歯周炎になると、歯肉の炎症がどんどん進行して歯と歯肉の境目の溝(歯周ポケット）が深くなり歯を支えている顎の骨（歯槽骨）も溶けて減っていきます。歯を支えている顎の骨が溶けてしまうので、最終的には歯がグラグラして抜けてしまうこともあります。

妊娠性歯肉炎の症状自体は、歯肉が腫れたり出血しやすくなるだけで、歯槽骨が溶けるまで悪化することはありません。ただし、そのまま放置してしまうと悪化して歯周病が進行してしまうので定期的に検診を受けて早めの治療やケアを受けることが大切です。

妊娠性歯肉炎の治療と予防法

妊娠性歯肉炎の治療は、毎日のブラッシングなどのセルフケアと歯科医院での定期的なプロフェッショナルケアが基本です。

毎日のセルフケア
妊娠性歯肉炎のそもそもの原因である女性ホルモンの分泌は、自分の力で止めることはできません。口の中を清潔に保つことが大切になります。
毎日できるだけ丁寧にブラッシングすることが大切です。歯肉が腫れている部分は出血しやすいのでブラッシングを避けてしまう人も多いのですが、むしろ気にせず、軽い力でいつも通りに磨いてください。磨かないでいるとさらに進行してしまいます。
ブラッシングの基本は、歯ブラシを歯の面にしっかり当てて、小刻みに動かす事です。特に歯肉の腫れが気になる人は歯と歯肉の境目を丁寧に磨きましょう。


歯科医院でのプロフェッショナルケア
毎日のセルフケアだけでは磨き残しがあったり、歯ブラシが届きにくい部分があるため、歯科医院で定期的にクリーニングをしてもらうことが大切です。
出産後は、育児でバタバタして受診が難しくなり、歯肉炎があると悪化しやすい傾向にあります。通える時に受診して、口腔環境を整えておきましょう。
妊娠性歯肉炎が発症すると、自身の体だけではなく、胎児に影響が及ぶ可能性があります。
また、元々持病がある方の場合は、妊娠合併症（高血圧や糖尿病）を引き起こす確率も高くなります。リスクを少なくして安全に出産するためにも、妊娠中に一度は、歯科医院で検診を受けましょう。